なぜ日本の「デフレ脱却」は不可能なのか? 完全雇用でも賃金上昇しないどころか、いずれ下降する。

コンビニ各社も日用品の値下げを始めたとニュースになるなど、日本はどうやらまだまだデフレ真っ只中にあるようです。

参考ニュース 競争激化 ローソン日用品29品目を値下げ|日テレNEWS24

政府はデフレ脱却を掲げてもう何年も頑張っていて、一部では随分とその結果が出てはいるようですが、どうにも本丸の「庶民の懐事情」を改善するまでには至っておらず、結局は金持ちはますます金持ちになるけれど大多数の庶民は相変わらずで、結果として残っている姿は「格差の拡大」しかなさそうな感じです。

ちなみに僕は、デフレ脱却なんてことを目標にあれこれ政策を打っても、それは金持ち優遇にしかならないとずっと思っていました。5年以上は前からそんなことを周りと話していたと思います。

その理由というのは、これがものすごく単純で、単純であるからこそ確信を持てているんですが、その理由は「世界にはまだまだ貧しい暮らしをしている人が山ほどいるから」です。

この理由に素直に納得してくれる人もいれば、あまりに単純過ぎる話であるが故かなかなか受け入れてくれない人もいますが、気になる人は一つの考え方として目を通してもらえたらと思います。

グローバル化の時代ですよ? なぜ失業率が下がれば賃金が上がると思えるの?

最近、完全失業率がかなり低い数値になっていると話題になったりしていました。3%を割ったんでしたっけ?どうだったかな? 正確な数字は忘れちゃったけど、とりあえず「完全雇用と言える状態まであとわずか!」「あともう少しで賃金は上昇に転じる!」みたいな話があちこちで聞かれたりしています。

参考 3月の完全失業率2.8% 前月比横ばい 市場予想2.8%  :日本経済新聞
参考 「人余り」が解消、いよいよ賃金は上昇局面へ | インフレが日本を救う | 東洋経済オンライン

でも僕はこの手の話に懐疑的です。なぜなら失業率が下がって仮に完全雇用と言えるような状態になろうとも、その時には企業は外国の労働者を活用すればいいだけだからです。ものづくりなら、遠くアフリカにでも船で材料持っていって作り、完成品をまたこちらに持ってくればいいだけですし、単純に労力が必要な現場では、人に投資するより新しいシステムに投資した方が未来が明るくなります。

知恵を出すのが経営者の仕事

経営者にとって人を雇うのは、一種の買い物です。年間給与300万円で人を雇うというのは、労働力を年間300万円で買うということです。終身雇用が当たり前の感覚だった時代ならまた人を雇うことの意味は少し違ったかもしれませんが、終身雇用が前提でなくなってきた今の時代は「雇用 = 買い物」です。その傾向はもちろん今後ますます強くなっていくでしょう。

で、そんな中で、買いたい労働力が市場で希少価値を持ち始めたら、経営者としてはどうしたらいいか。

そこで無駄に高い金を払って希少価値のあるものを買うなんてのは、知恵を出すことを怠っているダメ経営者じゃないでしょうか。本物の経営者であれば、そんな希少価値の高いものに頼らずにもっと安く買える代替品はないだろうかと、探して見つけてくるべきじゃないでしょうか。

石油の代わりにシェールガスを使おうと思えば、今までのシステムでは上手く回らないかもしれません。シェールガスという燃料に合わせたシステムや機材が必要になってくるかもしれません。でも、高い代金を払わされてみすみす希少価値の高いものを使わざるを得ない状況に自社を追い込んでいくぐらいなら、将来も見据えて「安い原料でしっかり回っていくだけのシステムを今のうちに作り上げていこう」「そのための多少の投資は仕方ない」という風に考えるのも一つの考え方として当然のことです。

経営者が考えるべきこと

人手不足が顕著なのは主に単純労働市場でしょう。経済の専門家もこの手の話になるとすぐ「コンビニで働く人の時給が今より○百円高くなれば……」みたいに話を展開していますし。

でもどうでしょう。かしこい経営者であれば、こういったことを考えるのではないでしょうか。

  • 政府はインフレ目標を定めてデフレ脱却を目指し続けている
  • ということは今後も今と同じ方向(賃金上昇圧力がかかる方向)に経済政策の圧力はかかり続けるだろう
  • つまり今無理をして高い賃金で労働力を雇っても、その“無理”はずっと続く可能性が高い
  • であれば今無理をしても、先はない。やがて自社がジリ貧に陥るだけだ

……。

  • 何か、高い賃金で人を雇わずに済む方法はないだろうか?

希少価値の高い労働力を買う代わりに、投資する

たとえば大量のレジ打ち要員が必要であれば、そのレジ打ち要員の仕事内容をできるだけ簡素化して、比較的安く買える外国人労働者で賄うことを考えるか、もしくは大胆にレジシステムそのものの改革に乗り出すか。たしかセブンイレブンあたりはこの大胆なチャレンジを始めたというニュースがあったと思います。

参考 大手コンビニ、2025年までに全店舗でRFIDを使ったセルフレジを導入するという計画を発表 – エキサイトニュース
参考 コンビニ大手5社、2025年までに全店舗にセルフレジ導入 | データ・マックス NETIB-NEWS

大量の作業員が必要であれば、これもやはりその作業を外国人労働者にやらせるか、その作業システム全体を見直して何らかの形に変貌させるか。そういうことを考えることになると思います。これはアマゾンなんかはすでに行っていますよね。

参考 アマゾンの物流倉庫、商品を運ぶロボットを国内初導入 – 日経トレンディネット

オペレーターとかの仕事もそうです。ソフトバンクなんかはつい先日僕が新しいサービスの申し込みをしたら、そのサービスの契約確認の電話を「サービス名すらまともに発音できていないオペレーター」がかけてきました。サービス提供会社がソフトバンクという名の知れた会社であったからいいものの、そうでなければ完全に怪しい電話でしたが、でもこういうのも広がっていけば「また外国人オペレーターかよ」程度で普通に過ぎていくことなんだと思います。

さすがに小さい会社がネット販売していてその注文受付けに外国人オペレーターを使うというのは怪しすぎて無理ですが、たとえばテレビショッピングとか、よく名の知れた大企業のサービスカウンターとか。そういうところでなら発音の怪しい外国人労働者でも別に大した問題もなくやっていけると思います。もちろんそのオペレーターは日本ではなく、自分の国にいながら働ける形で。そうすれば互いにWin-Winです。

どこかのタイミングで賃金はさらに一段と下げる

高くなり続ける or 高止まりすることが目に見えている労働力単価に対して、何も考えずに無策なまま高い賃金を払い続けるような企業は、生き残っていける企業じゃないでしょう。

つまり、生き残れる企業は賃金上昇圧力に加担してくれず、生き残れない企業は賃金上昇圧力を高めてくれるものの、いずれ支えきれなくなって(雇い続けられなくなって)その圧力はまた下がり。

そんなこんなで失業率は下げ止まりしているにも関わらず賃金上昇はなかなか叶わず、ウダウダと微妙なラインをしばらく這った後、どこかのタイミングでガツンと「(賃金が)下げ」ていくことになると思います。

なぜかというと、経営者たちは皆学んでいくからです。経済学者が「なぜ(賃金が)上がらないんだ?」と言っている間に、経営者たちは「成功例 = 高い労働力を買わずに上手くやっている例」を学んでいくからです。たとえばコンビニなどは今はアジア各国に出向いて「留学生向けのバイト説明会」をやっているといいます。こういうのも一つの例です。

参考 日本への留学生にコンビニ業務指南 ローソン、ベトナムに研修所 – SankeiBiz(サンケイビズ)

そういう、先を走る企業から経営者たちはどんどん学んでいきます。高い日本人労働力を雇わないで済む方法を。またシステム面でも同じです。世の中に事業としてはいろんな業界がありますが、単純労働者たちがやっていることそのものにはいろんな業界に似通った部分があります。だからそれぞれ、自社でも取り入れられる「他社の先進システム導入の成功例」から学んでいきます。

AIはよく分からない部分が大きいというのが今のところかもしれませんが、同じ業界内でどこか1社でもAIを上手く取り入れてくれたら、同業他社が同じものを取り入れるのなんてすぐです。どこかのタイミングでバンッ!と広まって、その業界では当たり前のシステムになったりするでしょう。

まだまだ安いところは沢山ある

個人の観光でも、意外と国内の移動の方が高くついたりします。東京から福岡に遊びに行く方が、東京からアジア諸国に遊びに行くより高くついたりします。…であれば「九州に遊びに行く? いやでももっと安く行けるから台湾でも行ってみようよ」となるのも当然のことです。

中国とかは今はもう労働単価が上がって世界の工場ではなくなりつつあるのかもしれません。でも、割高に感じながら“辞めさせづらい日本人”を雇うぐらいなら、遠すぎて同じように少し高くつくとしても、アフリカでの生産工場や何かが選ばれるでしょう。辞めさせづらいという厄介なリスクを考えたら、「総合的に考えたらアフリカで生産した方がいい」ということになっても何ら不思議じゃないです。

回数券でしか売ってない新幹線チケットを買うぐらいなら、1回あたりは少し高くても単発のヨーロッパ行き航空券の方が選ばれるであろうことと同じだと思います。ましてや、やがて仲介を専門にする業者でも現れれば、“格安チケット”も登場するかもしれません。

おわり

経済学者はなぜ、このグローバル化の時代に日本国内の経済指標だけをもって日本経済について語るのか。不思議でなりません。いや、理由は分かります。世の中がグローバル化していない時代の経済理論を習ってきて、それに当てはめて考えているからなんでしょう。でもなぜそんな愚を平然と冒せてしまうのか。ちょっとフラットに考えたら「単純労働力はまだまだ世界に山ほど転がってるよな」なんてことぐらい気付けそうなものなのに。

そんな部分が、学問として経済を見ている人たちの弱点の現れなのかもしれませんね。理論先行で考えるから、現実のすぐ目の前に明らかに存在している事実をなぜか見落としてしまう。

学者だからそれでも持論の正当性や正統性を皆に認めてもらえてればいいのかもしれないけど、理論で飯食ってるわけじゃない私たち一般人はちゃんと、経済学者よりも正確に経済を読んでいかなければならないと思います。経済学者よりも経済を読めないようでは一般人としてヤバいかもしれないです。少なくとも経営者としては失格でしょう。

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コメント

  1. 匿名 より:

    よく分かります。経済学者の人たちって経済理論しか見てないんですよね。しかも今ではそのまま当てはまらない理論なので、何の解決策にもならない。経済学者って頭悪いのかって思ってしまいます笑

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